
自然を再生! リジェネラティブな紙・バナナペーパー
2025.02.19
サステナビリティ分野で注目が集まる「リジェネラティブ」。ここでは、私たちのバナナペーパーの取り組みをリジェネラティブというキーワードに当てはめて紹介します。
皆伐で荒れた土地が緑豊かに
アフリカ・ザンビアのエンフエ村にあるバナナペーパーの工場は、アフリカゾウやライオンなど多くの野生動物が生息するサウスルアングア国立公園が近くにあり、大自然に囲まれた場所です。
バナナペーパープロジェクトを開始してから3年後の2014年に、クラウドファンディングなどのご支援により現在の地に工場を建設しました。
しかし私たちが工場を建てようとしたこの場所は、現地の人たちが調理用の薪などに使うために木を切り尽くし、荒れ果てた土地として放置された状態でした。
木がないため、日陰をつくるものが何もなく、工場の建設時も灼熱の太陽が照りつける中で作業を続けました。
つむじ風や砂埃に悩まされることも多く、また雨が降っても、土が水分を吸収する力は乏しく、すぐに洪水状態になっていました。
そこで私たちは、約8000坪のこの土地に木を植え、緑豊かにしようと決めました。
固有種を中心に苗木を買い、チームメンバーと一緒に植林を始めました。
植林が300本に達した頃、あることに気がつきました。
私たちが植えたはずのないところに、複数の小さな木の芽が現れはじめたのです。
それは、鳥や小動物がフンを通して落としてくれた種から芽生えたものでした。
工場の敷地内に少しずつ緑が増えたおかげで、鳥や小動物がやってくるようになっていたのです。
現在、私たちが植えた木は約500本、そして動物たちが植えてくれた木が約500本となり、ドローンの上空写真からもその変化が明らかにわかるほど緑豊かな土地になりました。
また工場も、自然のルールに沿った形(バイオクライマティックデザイン)で作ったことで、風通しが良く、エネルギーを使わずとも快適な工場環境が整っています。
環境循環が早い紙
私たちのバナナペーパーはザンビアで元々は廃棄されていたバナナの茎を活用しています。しかもオーガニックで栽培されています。
あまり知られていないですが、実はバナナの木(茎)は1本につき一房の果実しかできません。リンゴのように同じ木から何度も実る、ということが出来ないのです。
果実を収穫したバナナの茎は、伐採することにより、また新しい茎が成長し、実をつけることが出来ます。このサイクルがたった1年で行われるため、バナナはとても循環が早く、環境負荷の低い植物だと言われています。
クライメート・ポジティブな紙
2019年からは、同地域で活動するバイオ・カーボン・パートナーズ(以下BCP)という団体を通してクライメート・ポジティブに取り組んでいます。
カーボン・オフセットといえば植林を思い浮かべる方も多いですが、BCPは「今ある森を現地の人たちと共に守る」という形でカーボン・クレジットをつくっています。
ザンビアのサウスルアングアエリアとロウワーザンベジをつなぐ「緑の回廊」と呼ばれる森があります。ここは世代を超えて生息してきた野生動物にとっても非常に重要な森で、ザンビアの生物多様性を支えている存在です。
BCPの森林保護は自然だけでなく、現地のコミュニティとも協働することによって人や社会を守っています。カーボンクレジットからの売上によって、地域に病院や井戸を作るなど、人々の暮らしの改善に役立っています。
私たちのバナナペーパーは、ザンビアの生物多様性を守りそしてさらに繁栄させるネイチャーポジティブにも貢献しています。
自然を修復し、地球を豊かにするリジェネラティブへ
私たち人類が未来にわたって地球に住み続けるためには、経済的利益のみを追求してきたリニアエコノミー(直線型経済)を脱却し、サーキュラーエコノミー(循環型経済)へとシフトすることが急務です。
現在、残念ながら地球の生物多様性の損失は止まるどころか、むしろ加速しています。この約50年で、人口は2倍に増えた一方で、生きものの数は73%減少したという調査結果もあります。
そこで注目すべきなのが、劣化した自然を再生する「リジェネラティブ(再生)」の考え方です。
世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2030年までに、生きものの損失を止め、その状況を反転させ、自然を回復の道筋にのせる、という目標が掲げられています。
バナナペーパーでも活用されている和紙の技術をはじめ、日本には、自然との調和で生まれた伝統技術が数多く存在します。
それらは、自然の再生を加速させる大きな可能性を秘めています。
私たちのバナナペーパーも、自然の修復を支え、地球をより豊かにするための取り組みを今後ますます増やしていきたいと思います。