A:
以前、エシカル消費の観点でいうと、スウェーデンは日本と比べると20年進んでいる、と聞いたことがあり、日本の未来を見てみたい、という思いで2019年の視察ツアーに参加をしました。実際にスウェーデンでは、どんな人も迷うことなく、むしろ意識をしなくても、認証ラベルが付いている製品をスーパーやお店で手にすることができる世界が広がっていたのが、非常に印象的でした。その後、コロナ禍で世界中の動きが止まっているかのように見えた数年でしたが、ぺオさんと聡子さんからは、スウェーデンのサステナビリティの動きは、その間もどんどんと加速していると伺い、2019年からどんな変化が起きたのかを目撃したい、という思いで、2023年に2度目となるツアーに参加をさせていただきました。日頃、弊団体はエシカルの考え方やエシカル消費を普及啓発する活動をしていますが、エシカル・コンシェルジュ講座という座学の学びに留まらず、最先端のサステナビリティを実際に体験することで、より理解が深まり、自分ごと化され、実践につながるのでは、と感じたので、コンシェルジュたちに向けたツアーを企画しました。
A:
2019年と比べて、今回全体として印象的だったのは、まず一つ目に、エシカル消費の選択肢がさらに増えていたこととです。例えば、ビーガンの食事を提供するレストランやお店が増えているだけでなく、どれも美味しくて、ビーガンがもはや“スタンダート”であることを実感しました。スーパーに行くと、フェアトレードやオーガニックのチョコレートやコーヒーの選択肢が迷うほどあり、植物性のお肉やチーズ、ミルクはもちろん、動物福祉に配慮されたお肉や乳製品の選択肢もたくさんありました。どれも、必ず消費者にとってわかりやすいラベルや説明がされているところもポイントでした。驚いたのは、北欧最大のイーカというスーパーの建物の壁面に、「私たちはお客様が賢く持続可能な選択を簡単に行えるようにします」という文言とともに、認証ラベルの案内がされていることでした。「企業は消費者の教育者になれる」。まさにこれを実践している事例でした。
二つ目は、街の至るところにサステナビリティへのタッチポイントがあることです。街中に置かれているゴミ箱には、「持続可能な未来のために、ソーラーエネルギーを利用して、ゴミを圧縮しています。」というメッセージが書かれていたり、お寿司屋さんに入れば、「私たちは子どもたちの将来を大切にしています。だからこそ、エコラベル付きの魚介類を使用しています。」と店内の壁に書いてあったり、海に行けば、「ゴミか海の生き物か、どちらと一緒に泳ぎたいですか?」という看板が立っていたり。とにかくキャッチーで面白いコミュニケーションが多く、思わず立ち止まってしまうようなものばかりでした。移動においてもストレスがなく、路面電車や市内バス、電動ボートなど、公共の乗り物は自然エネルギーで動いていることの案内が必ずされていました。
三つ目は、エシカルな行動とその結果が環(わ)となり、見える化されている、という点でした。例えば、ルンド市内にあった駐車場は、壁面が緑化されているだけでなく、屋根全体がソーラーパネルなので、駐車場自体が発電所になっていて、ここで生み出したエネルギーは、電気自動車を充電するために使われる、というまさにクルクル循環駐車場でした。あるいは、市民が出す生ゴミは、バイオガスに生まれ変わり、市内を走るバスのエネルギーとなっていました。自分たちがアクションを起こせば、それが次につながっていることがわかるシステムであるからこそ、市民も参加をするのではないかと感じました。
私が最も大好きで癒された場所は、マルメ市の街中にあるオーガニックパークでした。市民が所有する畑があり、畑の一部で育てられたオーガニックの農作物は、パーク内にあるレストランで提供されています。世界最大のBee Hotel(蜂のホテル)があり、蜂たちにとっても憩いの場。大きなリンゴの木がたくさんあり、誰でも自由に食べられて、すべての生き物にとって居心地の良い場所でした。何よりも感心したのが、このオーガニックパークは市民からの要望でできたこと。街に何があったらいいか、どんな街にしたいか、みんなで議論して、考えて、自分たちの街を作っていく。こんなオーガニックパークが、東京にもあったらいいのに、と思いました。
A:
市役所でルンド市の取り組みについてお話を伺って、市として街のビジョンを明確に掲げ、高い目標に向かってみんなで動いていく扇動力を、市役所自身が持っている、ということに感銘を受けました。もちろん市民の声にも耳を傾けますが、やると決めたら市として挑戦をし続けるその姿が素晴らしいと感じました。特に脱炭素におけるエネルギー政策に関しては、目を見張るものがありました。また、市役所の調達が当然のようにすべてエシカル消費であることにも感激しました。美味しいフェアトレードの紅茶やコーヒー、またビーガンのベーグルサンドイッチを出していただき、幸せなひとときでした。
A:
スウェーデンのいわゆる一般的な暮らしを垣間見ることができたのも、非常に良い経験となりました。やはり印象的だったのは、ゴミの分別とリサイクルについてです。家の中でしっかりと分別しつつ、マンションの下にある収集所でもさらに細かくしっかりと分別していて、それが身についている様子が伺えました。生活の一部になっているので、特に面倒に思わない、と話してくれました。20代前半の若いカップルでしたが、日々の家事はそれぞれが分担しているとのことで、今の日本の若い世代とも通じるものを感じました。それから、とにかく家の中に余計なものがなくシンプルな暮らしであったこと。これはまさに、北欧ライフの象徴的なところなのかもしれないと思いました。お二人が「今とても幸せで満たされています。」とおっしゃっていたのを聞いて、翻って日本で同じことを自信を持ってどのくらいの人が言えるか、と思いました。この度は「幸せとはなにか」を改めて考えるきっかけとなりました。
A:
ツアーの食事で一番のハイライトは、スカンディックホテルの朝食でした。ここの朝食はおそらく世界で一番美味しくてヘルシーでエシカル!入り口では、「Start the day with yesterday’shero」というメッセージとともに、ジンジャーショットを飲むところからスタート。前日にホテルのレストラン廃棄として出してしまった野菜や果物を捨てないで、次の日の朝食にジュースとして提供していました。このホテルでは50%以上の食材がオーガニックを実現しています。ホテルの総支配人のトーマスさんから教えていただいたお話が印象的でした。ホテルが経営危機だったとき、経費節約と環境の負担を同時に減らしてうまくいった、とおっしゃっていました。まずはシンプルなことから、施設におけるエネルギーや水、食事などを見直していったそうです。提供する食事もプラントベースのものを増やしたら、肉などの食料の調達コストが高くなっていることから、結果的にコストが安くなり、CO2も大幅に削減できたそうです。私たち人間がヘルシーになればなるほど、実は地球環境も健全になっていくのですね!
A:
私は日頃、日本の企業への働きかけを積極的に行なっています。その中で、スウェーデンで学んできた最前線の事例や意識の違いなどを必ずお話するようにしています。多くの企業の方が、それらの内容にとても興味を持ってくださって、企業の中で活かしたいと言ってくださっています。また、最近は政府の委員会に参加をして、循環型社会形成のための政策策定に関わる仕事も多いので、スウェーデンでの取り組みや生活者の意識・行動変容などの事例はとても参考になっています。スウェーデンでは、生活者が簡単に、エシカルなアクションができる社会システムが実現していたので、日本でもそういった仕組みがどんどんと生まれてくるように、政策提言をしているところです。個人的には、無駄のない生活をさらに推し進めていけるよう色々とチャレンジしています。また、スウェーデンから帰国後は、活動をする際に押し付けがましいコミュニケーションではなく、エシカルなアクションというものが、いかにワクワクして楽しく、自分たちの生活の質を高めるポジティブなものなのだ、ということが伝わるように心がけています。
A:
百聞は一見にしかず!SDGsやサステナビリティ、エシカルといった言葉が溢れる中、どんなに座学で学んだとしても、実践の現場を見て、当事者に話を聞いて、自ら体験することでしかわからないことがたくさんあります。ワンプラネット・カフェの視察ツアーでの経験は、誰にとっても新しい世界の扉を開いてくれて、変化の一歩を踏み出すきっかけとなるはずです。また人生で一緒にサステナビリティの旅を共にしていきたいと思える、大切な仲間との出会いもあります。悩んでいるのであれば、「Close you eyes and just do it! 目をつむって、やってみるんだ!」。スウェーデン人から教わった言葉です!
本サイトの画像を一部ご提供いただきました。
©Hiroyuki Horigome