「ブランドで競争し、サステナビリティはシェアする」One Planet Café共同創業者のふたりに聞いた、日本がリーダーになれる可能性
2026.01.23
激動する国際情勢、経済的な不透明感──。
2025年は、多くの人が先行きへの不安を感じたり、ニュースを見るたびに「自分に何ができるんだろう」と無力感を覚えた人も多いのではないでしょうか。
そんな中、「SDGs疲れ」という声を耳にする機会も増えました。節電、節水、プラスチック削減……。「大切なのはわかる。でも、我慢ばかりでは疲れてしまう」──そう感じる人がいるのも自然なことかもしれません。
でも、サステナビリティは「我慢」だけなのでしょうか。
混沌(こんとん)とした時代だからこそ、「何が本当に大切か」が見えてくる。そう語るのは、スウェーデン発サステナビリティを専門とする会社「One Planet Café」の共同創業者、エクベリ聡子(以下、聡子)さんとペオ・エクベリ(以下、ペオ)さんです。
ふたりは20年以上にわたり、北欧と日本を行き来しながら、企業や自治体のサステナビリティを支援してきました。
サステナビリティは「我慢」だけではない。むしろ「希望」の側面もある。
ふたりの言葉には、理想論ではない、現場で培われた実感がありました。2026年を迎えた今、幸せとサステナビリティについて、そして混沌(こんとん)とした時代をどう生きるか。ふたりの対話から、そのヒントを探ります。

エクベリ聡子(Satoko Ekberg)
One Planet Café CEO・共同創業者。
20年以上の環境コンサルの経験を活かし、企業向け研修やスウェーデン視察ツアーを運営。アフリカ・ザンビアでのエシカル・バナナペーパー事業を推進。2016年、日本国内の紙製品において初めてフェアトレード認証(WFTO)を取得した(※1)。武蔵野大学サステナビリティ学科非常勤講師、武蔵野大学しあわせ研究所客員研究員。

ペオ・エクベリ(Peo Ekberg)
One Planet Café共同創業者・サステナビリティプロデューサー。
スウェーデン出身、マルメ市在住。若い頃に母国スウェーデンを離れ、国際ジャーナリストとして世界中を渡る。20年以上の視察ツアーガイド経験、また日本全国で数百回におよぶ講演実績を持つ。
幸せとは何か──希望を感じること、土台が安定していること
ペオ 僕にとって幸せとは、希望を感じることですね。
聡子 私は、土台が安定していること。幸せの感じ方は人それぞれですが、幸せになれるような土台をつくることが社会の役割ではないでしょうか。いろんな不安要素ができるだけなくなっている状態──それが土台だと思うんです。
ペオ それは世界幸福度ランキングでも同じなんです。フィンランドはここ最近の数年間1位だと思いますが(※2)、フィンランドの人に聞くと、「え? 私たちの国ナンバーワン? なんで?」と言う方もいるんですよね。それは一人ひとりが今の瞬間で「幸せ」ということより、やっぱり心配がないということが大きいのではないかと思います。
たとえば、同じ北欧のわたしが住むスウェーデンでは、病気になったら病院はほぼ無料だし、高齢者になることへの心配はほとんどない。大学を卒業するまで学費も無料だし。
心配がない=自分の幸せをつくることができる可能性が高くなると感じています。
聡子 土台が安定しているから、希望を持てる。希望があるから、チャレンジできる。サステナビリティは、その土台を支える条件だと感じています。

サステナビリティは「幸せの条件」である
聡子 つまり、サステナビリティって、まさに幸せの条件だと思うんですよね。
たとえば、お寿司を食べるのが大好きな人にとって、お寿司を食べている時間は幸せかもしれない。でも、そのマグロのネタ、いつまで当たり前に食べられますか? 今マグロの現状ってどういう状況になっていますか?
そういうことを考えていくと、私たちは結構微妙なところにいて。やっぱりサステナビリティをしっかりと守っていく、高めていくということ自体が、私たちの幸せを保障するものになると思うんですよね。サステナビリティなくして、幸せの条件って整うかというと、そうではないと思っています。
ペオ この間、スウェーデンで3人のインド人に会ったんですよ。彼らがスウェーデンで一番多く撮った写真は何だと思いますか?
空の写真です。
インドでは今、大気汚染が問題になっています(※3)。きれいな空というものがないような状態。その大切さは、失うとすごくわかる。それが今回、インドから来た彼らがなにを一番写真に撮ったのかに現れているのかなと感じました。
きれいな空気、きれいな水をつくっていくといったように、経済だけを考えるのではなく、社会と環境の事を考えることも必要なのではないでしょうか。

サステナビリティは「我慢」だけではない
ペオ サステナビリティは、大きく考えると2つの部分があります。
1つ目は、エコロジカル・フットプリント。節電しましょう、節水しましょう、プラスチックのゴミを減らしましょう、のように、悪いものを減らすこと。これらは、正直言って我慢ばかりなので、あんまり楽しくないんですよ。
でも、サステナビリティにはもう1つの面もあるんです。それは、エコロジカル・ハンドプリント。再生可能エネルギーを増やす、野生動物を増やす、自然を増やす、生物多様性を増やす、というように、良いものを増やすこと(※4)。ここは楽しい部分です。
日本の多くの企業が、サッカーで言えば前半戦ばかりに集中して、「相手のチームにもう3点入れられちゃった。まずい、私たちは1点しか入れてない…」と一生懸命我慢などをしながらサステナビリティに取り組んでいるように見えます。だからこそ諦めてしまうひとたちもいる。「いやいや、まだ休憩中ですよ。もうすぐ後半くるよ!」と言いたいんです。後半戦もありそこで巻き返すから、最終的に勝つこともできる。
私たちがいつも強調するのは、ポジティブなサステナビリティ。両方一緒に合わせると楽しめるんです。

日本には「思いやり」と「もったいない」がある
聡子 「日本にはサステナビリティのリーダーになれるポテンシャルがある」と私たちはずっと言い続けています。
日本には、「思いやり」とか「もったいない」という言葉がありますよね。「思いやり」って、言った瞬間に日本の人たちは何のことかわかるじゃないですか。人を想うとか、他の命を想うとか。スウェーデンにも実は思いやりという言葉に当てはまるものもあるんですけど、なかなか一言で表せるようなものって少ないんですよね。
「もったいない」も同じ。ものが持っている可能性を無視しちゃいけないよという考え方。そういう精神性と、あとは技術力の高さ。これをサステナビリティという軸で生かすことができたら、日本って無敵だと思うんですよね。
ペオ 日本人はノウハウ(Know-how)を持っています。SDGsについて結構具体的に知っているし、サステナビリティ、脱炭素化など、相当勉強して発表して報告して頑張っている。
だけど、オフィスから外に出かけるときに、バスはまだ化石燃料だったりする。スウェーデンでは、化石燃料から脱することをはじめとして、すでに実現していることが多くある。
たとえば今、私がいるマルメ市はスウェーデンで3番目に大きなまちだけど、外に出かけると化石燃料のバスを探しても乗ることできないんです。なぜかというと、1,000台以上の市内の全てのバスはもう化石燃料ではなくなったから。
日本にはノウハウがある。スウェーデンにはショウハウ(Show-how)がある。見せ方、実現した姿を見せることができる。ノウハウとショウハウ、両方一緒に合わせたらもうビンゴですよ。

ブランドで競争し、サステナビリティはシェアする
ペオ スウェーデンでいろんな企業を訪問すると、結構オープンに「いらっしゃい、どうぞどうぞ、見学してください、工場も見せますよ」とよく言われるんですよ。最初の頃はすごいびっくりしました。
だけど彼らがよく言うのは、「サステナビリティでは、競争しません。サステナビリティは、シェアすべきものです。ブランド力で競争しましょう」ということ。
なぜサステナビリティが必要か、深く考えてみてください。きれいな水がない、きれいな空気がない、森林がなくなる、動物がなくなる、プラスチックだらけの世界、温暖化が進む……。私たち人間はきっと生き残れないでしょう。
だからこそ、次世代に豊かなバトンを渡すための情報はシェアすべきなんです。人類のために。あなたの会社も生き残れば、私も生き残る。
聡子 私たちも、共創する際にビジョンを示すことを大切にしています。自分たちの利益ではなく、「こんな社会をつくりたい」という大きな目標を一緒に掲げる。
だからこそ、共感した人が仲間として集まってくる。「この紙を買ってください」ではなく、「一緒にやりませんか」という話ができる。

2026年という転換点で、次世代に何を渡すか
聡子 2026年は、21世紀という100年を4分割すると、第2四半期に入るんですよね。
ということは、もう4分の1が過ぎて、ここから2050年という半分までをつくるということは、この後の21世紀がどんな時代になるかということに対してすごく大事な意味を持っている25年だと思っています。
そして、特にSDGsなどの教育を経た、若い世代が一番活躍する25年にもなる。ものすごく大きな変動が起こる25年だと思うんですよ。
そのスタートラインが今年2026年。だから、そういう意識を持って、同じ思いを持つ人たちと徹底的につながって、インパクトを生み出すということがものすごく大事だと思っています。自分たちもどんどん進んでいくし、アクションを起こしたい人たちもどんどん後押しする。そんな年にしたいなと思っています。
ペオ 手伝いたい気持ちがいっぱいあるんです。サステナビリティの希望を感じているから。

– INFORMATION –
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そんな方のために、One Planet Caféでは毎年スウェーデン視察ツアーを開催しています。サステナビリティが「当たり前」になっている社会を、自分の目で見て、肌で感じる。参加者の中には「マインドセットが変わったと感じた」と話す人もいる、プログラムです。
詳細・お申し込みは、One Planet CaféのWebサイトをご覧ください。
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【脚注】
※1 WFTO認証取得について 2016年、One Planet Caféのバナナペーパーは日本国内の紙製品において初めてWFTO(世界フェアトレード連盟)の認証を取得(2016年)。
※2 フィンランドの幸福度ランキング World Happiness Reportによると、フィンランドは2017年から2024年まで8年連続で世界1位を獲得。
※3 インドの大気汚染 WHOの大気質データベースによると、インドの一部地域は世界で大気汚染が深刻な地域の一つ。
※4 エコロジカル・ハンドプリント 環境へのプラスの寄与を示す概念。エコロジカル・フットプリント(環境負荷)の対概念として提唱されている。
出典:Germanwatch

