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人が動く仕組みはどう生まれる? shikakeru代表が語るスウェーデン視察の価値 | One Planet Café|ワンプラネットカフェ

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人が動く仕組みはどう生まれる? shikakeru代表が語るスウェーデン視察の価値

2026.07.01

上井 雄太(Yuta Uwai)氏
株式会社shikakeru 代表取締役

株式会社フューチャーセッションズを経て、企業の新規事業創造や組織変革、行政のまちづくりなど、セクターをこえた共創プロジェクトに多数従事。現在は「仕掛けで、世界が動き出す。」を掲げるスポーツ共創アクションカンパニー・株式会社shikakeru代表として、スポーツ・サステナビリティ・地域をつなぐプロジェクトを手がける。2025年5月・10月の2回にわたり、One Planet Caféのスウェーデン視察ツアーに参加。

聞き手:永江 早紀(Saki Nagae/One Planet Café)

スウェーデン視察に参加する前、上井さんには、ふとした違和感があったといいます。

「スウェーデンではこうなんだよ」と語りながら、自分は一度も現地を見たことがない。

サステナビリティの情報は、調べれば手元に届く時代です。けれど、それがどのように暮らしや経営、まちの仕組みとして根づいているのかは、画面越しのデータだけでは想像しきれないこともあります。

上井さんは、その違和感を確かめるように、2025年5月、One Planet Caféのスウェーデン視察ツアーに初めて参加しました。同年10月にはマルメを再訪し、2026年には自ら視察ツアーの企画を進めています。

海外視察に興味はあっても、観光で終わるのではないか。社内にどう説明すればいいのか。費用や時間をかけて行く意味を、うまく言葉にできない。そんな迷いを抱えている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

なぜ上井さんは、年内に2度もスウェーデンを訪れることになったのか。参加前の課題感、現地で見た「仕組み」の正体、そして帰国後の変化を追います。

「現地を見ていない」違和感から始まった、スウェーデン視察

永江:まずは、スウェーデン視察ツアーに参加しようと思ったきっかけを教えてください。

上井さん:ここ数年、サステナビリティに関わる仕事が増えていました。ただ、自分自身は、その“本場”とされる場所をまだ体感できていなかったんです。

スウェーデンの取り組みについて見聞きするたびに、ずっとうらやましい気持ちがありました。一方で、「スウェーデンではこうなんだよ」と語りながら、自分は一度も現地に行ったことがないじゃないか、と気づいたんです。

永江:参加される前から、すでにサステナビリティに関わるお仕事をされていた中で、日本で進めるときの課題感もあったのでしょうか。

上井さん:日本では、サステナビリティに関心を持って、頭でも体でも理解して行動している人は、すでにとても進んでいると感じています。一方で、まだ接点の少ない人たちにどう自分ごととして受け取ってもらうか。そこに課題を感じていました。

学びに来たのではない——広い世界へ踏み出すチャレンジ

永江:初日から「shikakeru Swedenを立ち上げよう!」という話をされていたとか。

上井さん:はい。少し現地に入った勢いもありましたが(笑)、「学びに来たんじゃない。shikakeru Swedenを立ち上げに来たんだ!」と、自分にも言い聞かせていました。

「スウェーデンすごいね」で終わったら、日本に帰って何もできなくなると思ったんです。だから、限られた滞在期間の中で、shikakeruとしての旗をどう立てるか、という感覚を持っていました。まだ滞在3時間でしたけどね(笑)。

永江:「学びに来たんじゃない」という言葉がありましたが、それはツアーに出る前からあった想いだったのでしょうか。

上井さん:そうなんです。学生時代にはバックパッカーのように海外を旅していたこともあったんですが、社会人になってからはなかなか機会がなくて。英語を話す機会も少なくなり、だんだん海外に対する苦手意識のようなものが大きくなっていました。

日本では対話やファシリテーションの仕事をずっと続けてきましたが、言葉がままならない場所で、自分の持っているコミュニケーションが通用するのかという怖さもあったんです。

40歳になる前に、そこから脱却したい気持ちがありました。今回の視察は、学びに行くという意味ももちろんありましたが、自分の40代以降の人生に向けて、広い世界へ踏み出すチャレンジでもありました。自分の中での目標は、一人でもいいから友達をつくることでした。結果的に、ペオさんは僕にとって大事な友達だと思っています。

永江:そうだったんですね。以前にも海外視察に関心を持っていたけれど、タイミングが合わなかった時期があった。今回、ご自身のタイミングで参加できたことにも意味があったのかもしれませんね。

上井さん:そうなんです。もちろん学びは大事ですが、僕はどちらかというと、学んだものを日本でどうオリジナルに実践するかに興味がある。今のタイミングで行けたからこそ、いくつかチャレンジにつながっている感じがします。

東南アジアをバックパック旅行していた頃。サッカーボールを持って行き、現地の人たちと交流していました。

意識がなくても関われる——スウェーデン視察で見えた「仕組み」の正体

永江:現地で見えた「仕組み」について、もう少し聞かせてください。スウェーデンに行って、特に印象に残ったことは何でしたか。

上井さん:スウェーデンに行って感じたのは、サステナビリティが特別な関心を持つ人だけに支えられているわけではない、ということでした。特別に意識していなくても、自然と関われるような工夫に満ちていたんです。

永江:その「意識していない人でも関われる工夫」は、具体的にどんなところで感じられましたか?

上井さん:僕が感じたのは、大きく二つありました。一つは、社会の仕組みとして整っていること。もう一つは、僕らが普段つくっている「仕掛け」に近いものです。

社会の仕組みとして印象的だったのは、再生可能エネルギーで走っていることを示す表示が、電車の中にさりげなくデザインされていたことです。ボトルのデポジットのような仕組みも、暮らしの中に自然にありました。

スポーツショップでは、フェアトレードのサッカーボールが普通に売られていました。しかも、大手ブランドの商品よりも手に取りやすい価格帯だったんです。僕はスポーツに関わっているので、そこは特に印象に残りました。

一方で、「仕掛け」に近いと感じたのは、気づいた瞬間に少しうれしくなるようなデザインでした。たとえば、信号機のマークが男性だけではなく、多様な人を想起させるデザインになっている。普段歩いているだけでは気づかないかもしれないけれど、ふと目に入った時に「ここにもメッセージがある」と感じたんです。

スーパーで買った商品には、CO2排出量がひと目で分かるような表示もありました。言われてみれば気づくけれど、どれも日常の中に自然にある。押しつけではなく、思わず目に入る。そこにポジティブな空気感がありました。

永江:まさにスウェーデンではサステナブルな選択肢が“特別なもの”としてではなく、日々の暮らしの中に組み込まれていることが重要だと感じています。

マルメで見えた、サステナビリティを経営と日常に落とし込む視点

永江:10月にはマルメを再訪して、Malmö FF(マルメFF)も訪問されたんですよね。

上井さん:日本のスポーツクラブにも、地域や社会課題に向き合っているクラブはたくさんあると思います。地域への貢献や社会的な活動も、もちろん大切にされています。

そのうえでマルメFFでは、サステナビリティがクラブ経営の中心に組み込まれていることが印象的でした。地域への貢献やCSRとして別枠で行うのではなく、あらゆる事業活動がサステナブルになるように、クラブ経営の仕組みそのものに組み込まれている。そこがすごく印象的でした。

一方で、ちゃんとスポーツビジネスとしても成り立っているんですよね。スタジアムを持ち、社交の場をつくり、サッカーが人々の暮らしの一部になっている。その中にサステナビリティが当たり前のように入っていることが、特に印象に残りました。

永江:今、ペオさんのお名前も出ましたが、ツアー中のペオさんの言葉で、印象に残っているものはありますか。

上井さん:ペオ語録を何個かつくっていて、「地下から地上へ」という言葉は実際に夢に出てきました(笑)。日本でも出てきます。地下から地上へ、って。

やっぱり僕がペオさんから一番得たのは、言葉だけではなく、一緒に過ごす中で感じた「ポジティブ・サステナブルアクション」という考え方ですね。それを日本で、スポーツをいかしながら実践していく。そこが僕には強く響きました。

永江:いつも冗談で「これ絶対夢に出てくるからね」とペオさんが言うんですけど、本当に夢に出てくるんですね(笑)。

上井さん:あの絵と一緒に夢に出ました。地球の上に人が立っている図、あるじゃないですか。ただ夢に出たのか、「夢に出る」と言われ続けたから夢に出たのかは分からないですけど(笑)。

永江:一定の効果があるということですね(笑)。

上井さん:でも、すごく分かりやすいんです。たとえば現地で訪問した空間でも、「ほら、地下のものがないでしょう」と言われたんです。ガラスでできているものがあっても、「ガラスももともとは砂だよね」という話になったりして。

一方で、日本に戻って東京の自分の机を見たら、「地下」がめちゃくちゃあるなって思ったんです。そういう見方ができるようになったのは、すごく大きかったですね。

永江:少し前に、中高生の方々とスウェーデンを訪問した時も、「地下から地上へ」はすごく響いているように感じました。何を見ても「これは地下だ」「これは地上だ」と話していて。あの図もすごく印象的ですよね。子どもから大人まで、見た瞬間に理解できる。そういう分かりやすさやデザインの力は、スウェーデンらしいコミュニケーションの一つだと感じています。

「正しさ」だけでなく「楽しさ」で動く——視察後に手に入れた自信

永江:帰国後、お仕事や活動のなかで変化したことはありますか。

上井さん:まさに、今shikakeruがやっている活動にもつながっています。

サステナビリティにおいて、正しさはすごく大事だと思っています。でも、正しさを前面に押し出す活動は、もともとやりたくなかったんです。一方で、そうしないといけないのではないか、という怖さもありました。

でもスウェーデンに行って、正しさに基づいた上で、楽しさや、みんなが乗っかりやすくなる仕組みや仕掛けがあることを見たんです。そこで、「じゃあ、それでいいんだ」と思えました。

僕らがやるのは、誰もが参加しやすい企画やプロジェクトをつくりながら、そこにちゃんと正しさがある状態にすること。たとえば有識者の方にも入ってもらいながら進める。

そういう動きに、自信を持ってチャレンジしようと思えるようになったのは、やっぱり現地に行って見て、「あ、こうなんだ」と分かったことが大きいですね。

永江:日本では、課題や問題から入って、「まず自分たちができることから始めよう」という伝え方になりがちなところもありますよね。でも、スウェーデンで見たものは、課題を把握し何をすべきかを理解した上でポジティブなソリューションを生み出しているように感じます。

上井さん:そうですね。たとえば日本では、「シロクマがピンチです。その背景には私たちの暮らしや活動があります」というように、課題から入る伝え方が多い印象があります。

でもスウェーデンでは、ゴミ箱に何かを投げると音が鳴るとか、バス停の上に芝生や花があって、そこに蜂が来るとか。ちょっとしたことなんですけど、いろんなところにポジティブな仕掛けがちりばめられているんです。

さらに、バス停の芝生も、見た目だけではなくて、雨水を土壌や植物で受け止め、水害のリスクをやわらげる仕組みになっている。そういう工夫が、暮らしの中に自然にあるんですよね。

永江:今のお話を聞いていて、改めてスウェーデンは「伝え方」がとても上手な国だなと感じました。

日本では、サステナビリティの取り組みを伝えるときに、「どこまで説明するべきか」「透明性をどう担保するか」をとても丁寧に考える場面が多いと思います。それは大切な姿勢である一方で、活動をかたちにするまでのスピードを少し遅くしてしまうこともあるのかもしれません。

スウェーデンでは、必要な仕組みを整えたうえで、つくる人も、つかう人も楽しく関われるようにしている。真面目さだけで終わらず、遊びを効かせていくところが印象的ですよね。だからこそ、shikakeruさんが大切にされている「楽しさから入る」という姿勢とも、すごく響き合うものがあるのだと思います。

上井さん:まさに、そういったことにチャレンジしているのが、今のshikakeruの活動です。スウェーデンで見たもの、感じたものを、日本ならではのかたちで増やしていきたいと思っています。

たとえば今取り組んでいるサステナトレセン(※)では、「サステナブル」という言葉を前面には出していません。「みんなが住み続けたくなるまちって何?」という問いだけにしているんです。そうすると、問いから生まれるアイデアやアクションがポジティブになるんですよね。

たとえば、「アレルギーのある子も食べられるアイス屋さんがあったらいい」とか、「CO2排出を減らす工夫をしたアイスをつくって、湘南ベルマーレさんの試合で販売してみよう」とか。そういうアイデアが、子どもたちから自然に出てくる。

スウェーデンで見たものと感じたものを、日本ならではのかたちで増やしたい。そういう感覚で取り組んでいます。

※「サストレジャパンプロジェクト」とは?

プロサッカークラブをハブとして、小学5年生と企業、自治体がつながり、「みんなが住み続けたくなる街ってどんな街だろう?」という問いのもと、主に探求学習の授業の中で、地域の未来を切り拓く”未来世代”の子どもたちと大人たちとが、これまでにない持続可能なまちづくりに挑んでいく、ESD(持続可能な開発のための教育)プログラムである「サストレ」を全国に展開していくプロジェクトです。

2024年6月に、shikakeruの企画提案のもと、湘南ベルマーレと茅ヶ崎市が連携し、市内の公立小学校の5年生を対象に、実証的にプログラムをスタート。2年間で3校17クラス、560人の生徒が参加し、企業も延べ27社が参画。2025年度は「一般社団法人エシカル協会」がプログラムに伴走することで、子どもたちのアイデアに「エシカル(倫理的)な消費・ライフスタイル」の視点も加わり、ユニークなアクションが次々に生まれました。

(「サステナトレセンProject.」は、株式会社shikakeruの商標です)

日本とスウェーデンをつなぐ、新たな仲間との旅へ

永江:今年のツアーに向けて、どのようなツアーにしていきたいですか。どういった方に集まってもらいたいかも含めて、お聞かせください。

上井さん:テーマとしては、「サステナビリティ×イノベーション×まちづくり」を考えています。

スウェーデンで進んでいる取り組みを見て、感じて、「日本では何ができるんだっけ?」という問いを持ち続ける時間にしたいんです。

僕は、大いなる合宿のようなものだと思っています。日本を離れて、4泊5日くらいの時間の中で、異国の地で感じて、対話する。そこで残るのは「スウェーデンすごいな」という感想だけではなくて、最後は「日本で、自分たちは何ができるのか」という話になるんですよね。

その国の空の下で語り合うことに、すごく価値があると思っています。次の日本や地域を引っ張っていくような人たちに来てもらえたら嬉しいですし、そういう人たちと一緒に、サステナビリティを体現している国で感じて、話して、日本で何ができるかを考えたいです。

永江:最後に、スウェーデンに行く方法はいろいろある中で、なぜOne Planet Caféのツアーだったのでしょうか。

上井さん:やっぱり、日本とスウェーデンをつないでいる人たちだからですね。

聡子さんや早紀さんはもちろん、ペオさんも日本のことが本当に好きなんですよ。ご紹介いただく現地の方も、日本に親しみを持っている方が多くて、それがすごく嬉しかったです。

そうした出会いから、僕もスウェーデンと日本をつなぐ人になりたいと思いました。帰国後も、スウェーデンの話ばかりしていて。日本とスウェーデンをつなぐところに、自分の次の人生の中でも関わっていきたい。そんなご縁をいただいたように感じています。

One Planet Caféさんしかいないというか。ブリッジを一緒に仕掛けていきたいと思っています。

上井さんの話から改めて、視察の価値は現地での体験にあると感じました。

今回は現地で見て、聞いて、対話する中で、「自分たちのやり方で進んでいいんだ」と確信を持っていただいた、その実感こそが、上井さんにとって何より大きな収穫だったのではと感じています。

「正しさ」だけではなく、「楽しさ」で人が動き出す仕組み。その視点は、日本の企業や地域にとってもヒントになるはずです。正解を持ち帰るのではなく、自社の未来を耕すための問いを見つける。そんな価値を生み出す視察をこれからもつくっていきたいと思います。

– INFORMATION –

以下は、記事内容とは独立したプログラムのご案内です。関心のある方へ、One Planet Caféの活動をご紹介します。

▼ スポーツ×イノベーション×サステナビリティ視察ツアー

One Planet Caféでは、スウェーデンのサステナビリティを現地で学ぶ視察ツアーを開催しています。

2026年は、「スポーツ×イノベーション×サステナビリティ」をテーマにした視察ツアーを企画しています。現地の取り組みを見て、聞いて、対話しながら、日本の企業や地域で何ができるのかを深めていく時間です。

ここでいうイノベーションとは、難しい技術革新だけではありません。楽しさや遊び心、つまり「仕掛け」を起点に、人々の意識や行動が自然と変わっていくことも、イノベーションの一つです。

そして、まちづくりとは、そうした仕掛けが日常の暮らしやビジネスの中に当たり前に溶け込んでいくことを指します。

単に「スウェーデンの進んだ事例を学ぶ」のではなく、なぜスウェーデンでは誰もが楽しく動き出す仕組みが生まれるのか。その背景にある視点を現地で体感し、「日本の企業や地域、自分たちのビジネスで何ができるのか」を参加者同士で深めていく、大いなる合宿のような5日間です。

申込締切は2026年7月20日です。参加をご希望の方は、以下の募集ページで詳細をご確認ください。

視察ツアーの詳細を見る・申し込む