イノベーションが止まらない?!スウェーデン・マルメ市が仕掛ける、スタートアップ支援とイノベーション創出の仕組み
2025.10.08
新たな市場が見込める良いアイデアがあっても、予算確保やリソースの壁を越えられない。
事業化には何が必要か分からず、誰にどう相談すればいいのか分からない。
そして、「失敗」が許されないような風土に、挑戦をためらってしまう。
これらは、多くのイノベーションを妨げる共通の課題です。グローバル・イノベーション・インデックスで2位(‘24)を誇るスウェーデンには、その課題を乗り越えるヒントがあります。(WIPO, 2024)
マルメ市のMINC実践メソッド
スウェーデン第3の都市マルメ。人口約35万人(2024年現在、マルメ市公式統計)のこの都市が、なぜ世界的にも注目されるスタートアップ都市になれたのでしょうか?その秘密を解き明かす鍵こそが、MINC(Minc Malmö)です。
MINCは、2002年にマルメ市が公共の利益のために設立した非営利のスタートアップ支援施設です。かつて造船業で栄えながら産業の衰退を経験したマルメ市は、「失われた雇用を、イノベーションで取り戻す」という明確なビジョンを掲げ、その中心としてMINCを据えました。ここは、起業家がアイデアを事業として育て、世界にポジティブな影響を与えるための「実践の場」です。
わたしたちのスウェーデン拠点もここマルメにあります。
1. 大学・研究機関との密な連携
MINCのスタートアップにとって、大学・研究機関は不可欠なパートナーです。近隣のマルメ大学やルンド大学とは、密な連携が図られています。
たとえば、MINCは起業家と大学の研究者を直接つなぐ媒介者の役割を担います。これにより、アイデア段階から最新の研究知見や専門的なアドバイスを得られます。学生がゼミ活動の一環でMINCに参加したり、大学と共同で教育プログラムを実施したりと、アカデミアとスタートアップが協働する仕組みが確立されています。
2. 経験豊富な経営者・投資家との橋渡し
アイデアを事業にするには、ビジネスのプロからの助言が不可欠です。MINCは、経験豊富な経営者やエンジェル投資家、ベンチャーキャピタルとのネットワークを構築し、「実践的な学びの場」を提供しています。
ここでは、ビジネスプランの壁打ち、資金調達のピッチ練習、マーケティング戦略の策定など、起業家が直面するあらゆる課題に対して、専門家によるメンタリングが行われます。さらに、アクセラレータープログラムを通じて、投資家ネットワークへのアクセスを促進し、資金調達のノウハウを直接学べる仕組みが整っています。
3. 自治体主導で創る「挑戦の文化」
MINCの最大の特徴は、マルメ市が所有・運営する公的機関である点です。公的な組織だからこそ、短期的利益に囚われず、失敗を許容し、再挑戦を後押しする環境をつくり出すことができます。実際、MINCが支援したスタートアップの成功率は非常に高く、その実績はOECDでも評価されています。
また、2024年にMINC内に開設された「ジャパン・ビジネス&イノベーション・ハブ」は、日本の企業が持つ技術やアイデアを、この挑戦の文化の中で育てるための戦略的拠点です。日本のスタートアップがマルメへ進出するだけでなく、マルメのスタートアップが日本市場へ展開する双方向のサポートを提供しています。

この素敵なプロジェクトを率いるのは、長年スウェーデン時事ネタを分かりやすく日本に届けてくださっているブロンベリひろみさん(写真右)と、京都在住7年の経験を持つイーダさん(写真左)。
「アイデア」を「事業」に変えるための”戦術”とは
MINCで生まれるイノベーションは、単なる偶然の産物ではありません。そこには、アイデアを事業に変えるための明確な“戦術”が存在します。それは、「信頼と協力」のエコシステム構築と、行政の「ファシリテーター」としての役割です。
日本では自治体主導の支援が「箱物」の提供に留まっているケースも多いのに対し、MINCが提供するのは、オフィススペースだけではない「信頼と協力」のエコシステムです。MINCには、40カ国以上から起業家が集まり、支援企業の約40%が女性主導であるという高い国際性と多様性を誇ります。孤独な挑戦を支えるコミュニティの力が、アイデアを具体的な行動へと変え、事業としての成功を加速させているのです。
なぜ日本の支援は事業化につながりにくいのかという問いに対し、日本では、まず箱(ハブ)をつくり、そこに人を集めようとするが、スウェーデンでは先に人(起業家、大学、投資家)のコミュニティをつくり、そのコミュニティを支えるためにMINCという場が生まれた経緯があります。つまり、順番が逆なのです。イノベーションの本質は「人」であり、「場」は人を結びつけるための道具に過ぎません。

イノベーション創出の世界へ飛び込もう!
ここまで読み進めてくださったあなたは、きっと「スウェーデンのイノベーション創出の仕組み」を理解し、自社で実践するためのヒントを得ていただいたのではないでしょうか。
MINCに満ちる起業家たちの熱気、まち全体を実験場とするマルメ市の挑戦、そして、人と人が気軽につながり合うコミュニティの温かさ。これらは、実際に現地に足を踏み入れるとさらに実感していただけます。
あなたのアイデアを単なる「思いつき」で終わらせず、「現実」に変える第一歩を踏み出してみませんか?まずは、あなたの会社でもできる「MINCモデル」の3ステップを参考にしてみてください。
・社内で「実験」を許容する小さなチームをつくってみる
・スタートアップや大学との「カジュアルな対話」を企画してみる
・事業アイデアの「社会的意義」を定義してみる
そして、新たな挑戦にむけて、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください!
✈️ スウェーデン・マルメのイノベーションを現地で体験!
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”mincはヨーロッパで最も大きなスタートアップハブの一つです。”
出典:
世界知的所有権機関(WIPO)『Global Innovation Index 2024 – Executive Summary』(p.16)PDFはこちら
マルメ市公式サイト「Facts and statistics – Population」https://malmo.se/Facts-and-statistics/Population.html?utm_source=chatgpt.com

