日本のサステナビリティ進捗度は? ― 2025年SDG Indexを読み解く
2025.07.24
今年6月に発表された「持続可能な開発目標(SDGs)報告2025(SDG Index 2025)」において、日本は世界167カ国中19位となりました。前年の18位からわずかに順位を下げたものの、依然として上位グループに位置しています。一方この報告書からは、日本だけでなく世界全体が抱える課題を読み取ることができます。
ここでは、国際社会全体の進捗と日本のSDGsの達成状況、今後の重点課題についてまとめます。
SDG Indexとは
SDG Indexは、国連が掲げる17の持続可能な開発目標(SDGs)に対して、各国の達成度を評価した世界的指標です。持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)とドイツのベルテルスマン財団がまとめ、国連から毎年発表されており、政策立案や事業戦略を考えるうえで重要なベンチマークとされています。
SDGsは順調に進んでいるのか?
残念ながら、答えはノーです。
全ターゲットのうち、目標達成に向けて順調に進んでいる、またはある程度前進しているものは35%のみで、半数以上は達成が非常に厳しい、または取り組みが後退していることが指摘されています。
特に深刻な世界の課題として、次にいくつか紹介します。
・8億人超が、依然として極度の貧困状態にある
・気候変動の影響で、2024年の平均気温上昇は1.55℃(産業革命以前の水準比)で、観測史上最も暑い年に
・約11人に1人が飢餓に直面(’23年)
・女性が行っている無給の家事やケア労働は、男性の5倍
・22億人が安全な飲料水にアクセスできない(’24年)
・政府開発援助が減少。今後さらに削減される見通し(’24年)
しかし、すべてが後退しているわけではありません。次の分野では前進が見られており、さらなる発展が期待されています。
・5歳未満児の死亡率が、SDGs採択年の2015年度比で16%改善(’23年)
・2015年以降、新たに1億1,000万人の子どもや若者たちが学校に通えるようになった
・差別的な法律の撤廃やジェンダー平等の枠組みの確立に向けた前向きな法改正が報告されている
・世界人口の92%が電気にアクセスできるようになった(’23年)
・再生可能エネルギーが台頭してきており、2025年には石炭をしのぐ主要電力源となる見通し
・インターネット利用率が68%に増え(‘24年)し、教育、雇用、市民参加の機会が開かれている
日本の評価と進捗状況
ここで日本の取り組みについての評価を詳しく見ていきましょう。
前述の通り、日本は総合順位では19位で相対的には悪くはないのですが、高評価の目標は(緑)は、「目標3(健康と福祉)」のみとなっています。
目標3では、母子保健や平均寿命の高さに加え、非感染性疾患の管理、新生児死亡率の低さといった複数の指標で達成済み評価(A)を得ており、世界的にもトップクラスの成果です。
ただし高評価の本目標においても、喫煙、ウェルビーイング、健康格差の縮小といった点では、改善が求められています。
また次の目標については、深刻な課題を残している(赤)という評価となりました。
・目標2(飢餓をゼロに)
・目標5(ジェンダー平等)
・目標12(持続可能な消費と生産)
・目標13(気候変動対策)
・目標14、15(生物多様性)
これらの分野については、次のような指摘があります。
●気候変動対策(目標13)温室効果ガス排出削減の遅れ。再生可能エネルギー導入率が低く、カーボンニュートラルに向けた実効性が問われている。
●ジェンダー平等(目標5)
男女間の賃金格差、政治的意思決定への女性参画の遅れ。ジェンダー・ギャップ指数は依然としてG7で最下位。
●持続可能な消費と生産(目標12)
食品ロスやプラスチック廃棄物の多さ、循環型社会への移行の遅れが目立つ。
また、目標2(飢餓をゼロに)が挙げられていることに驚かれたかもしれません。
これは、目標2に含まれる「持続可能な食料生産と栄養の確保」に関連しています。
この指標の一つに「持続可能な窒素管理」があるのですが、日本での取り組みは十分でなく、大気や地下水への汚染リスクが増している点や、肉などの動物性タンパク質消費の増加が環境負荷の一因となっていることを指摘する声もあります。
求められる対策
上記の課題に対し、日本では特に次のような取り組みが求められていると言えます。
●脱炭素社会への取り組み加速
石炭火力など化石燃料から再エネの大幅シフト、グリーン投資の推進、植物性タンパク質など食におけるよりサステナブルな選択肢の充実
●包括的なジェンダー改革
性別を問わず社会および私生活で自立、活躍できる環境整備にむけての制度改革に加え、企業文化やメディア・教育現場での変革を後押し
●サーキュラーエコノミーの推進
既存の使い捨ての経済システムを抜本から見直し、徹底した資源循環の仕組みを社会全体として実装
●サステナビリティの見える化、自分ごと化
企業・自治体・学校・個人が日々の行動にサステナビリティの視点を組み込み、行動に結びつけるための啓発や仕組みの拡大
おわりに
SDG Indexでの上位ランクは一見好成績に見えるかもしれませんが、日本においても、世界的に見ても、SDGsの目標達成にはまだ乗り越えるべき壁が大きいことがわかります。持続可能な社会を本気で実現するには、目標と現実とのギャップを直視し、各セクターが具体的なアクションを起こす必要があります。
一方で、日本をはじめ各国で成功事例や確かな成果も生まれています。その多くは、これまでになかった様々なステークホルダーの協働や、新たな商品・サービスを生み出し、新しい時代への変化を推進しています。
若い世代のSDGsへの意識が高まっていますが、改めて、SDGsの達成は私たち大人の宿題。「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を再度見つめ、希望を持って、一人ひとりの行動につなげていきましょう。


