
「中古」から「Preloved(愛されたもの)」へ ー サステナビリティが生み出す新たな価値 ー
2025.01.16
サーキュラーエコノミー(循環型経済)の重要な要素の一つが「Reuse(再利用)」です。近年、スウェーデンをはじめとするヨーロッパでは、古着や中古品(リユース品)に対する価値観が大きく変化しています。
例えば、スウェーデンでは、街中にセカンドハンドショップが数多く点在しています。また2015年にオープンした世界初のリサイクル・アップサイクル専門のショッピングモール(Retuna)は、毎年安定した収益を上げており、中古市場が成長していることが分かります。
ポルトガルの国際空港では、高級ブランド店が並ぶ中、「Preloved(愛されたもの)」という中古バッグ専門店がオープンしました。質の高い中古のハイブランドバッグを提供しており、この背景にはリユース商品に対する価値観の変容があるようです。
先進事例①:明日のヴィンテージをつくろう
*Nudie Jeans公式HPから
スウェーデン発のデニムブランド Nudie Jeans(ヌーディジーンズ)は、「Create tomorrow’s vintage(明日のヴィンテージをつくろう)」というスローガンのもと、履き慣らしたデニムを回収し、ヴィンテージデニムとして再販売しています。回収に協力したユーザーには次回購入時に使用できるクーポンを配布し、参加を促しています。
Nudie Jeansのユニークな取り組みの一つは、デニムの修理が「無料で永久保証」されていることです。店舗に持ち込み修理サービスを受けるか、近隣に店舗がない場合は修理キットを郵送してもらうことができ、1年間で約7万3000本*1 のデニムが修理されています(’23年)。こうした取り組みが、ブランドの確立と顧客との関係性の強化につながっています。
先進事例②:3人先まで着られる服づくり
*Polarn o Pyret 公式HPから
スウェーデンの子ども服ブランド、Polarn o Pyret(ポーラン・オ・ピレット)は、創業当初から「最高品質で、次世代の子どもたち、そしてさらにその3人先にまで受け継がれる服づくり」を掲げてきました。成長が早い子ども向けに、1回きりで終わらない耐久性と価値を持つ服を作っています。
ここでも「Preloved(愛されたもの)」という概念が重要な役割を果たしています。中古服を回収し、再販することで、長く愛される衣服の循環を促進。2023年には、12万4000着以上*2 の中古商品が販売されました。
「中古」を超える、新たな価値へ
これらの事例に共通するのは、単なる「中古品」でなく、「明日のヴィンテージ」や「3人先まで着られる服」といった新しい価値観を生み出している点です。こうした捉え方が、これまで「安くて古い」というネガティブな印象を持たれがちな中古品に、以前の使用者から大切にされてきたストーリーを宿し、新たな価値を生み出しています。
日本での動き
日本でも、若者を中心に古着文化が広がりを見せています。さらに、「メルカリ」や「ラクマ」といったオンラインマーケットプレイスの普及により、リユース商品を手に取る人々が増加しています。輸入物や特定のジャンルに特化した古着屋も増え、経済的な理由だけでなく、新たな価値を求めて利用する人々も増えています。
日本においては、ヨーロッパほどサステナビリティへの関心は広がっていませんが、それでもリユース商品の存在感は今後ますます高まることが予想されます。
大量生産・大量消費の経済システムから、より循環型システムへの転換を実現するためには、モノに対する価値観の根本的な変革が求められています。
(参考)