1枚の紙で世界を変える?日本初フェアトレード認証の紙 「バナナペーパー」!
What’s banana paper? バナナペーパーとは
「バナナペーパー」。名前を聞いただけで楽しくて、美味しそうだと思いませんか?バナナは、1本の茎から1度しか実が取れないため、収穫時には茎も切ってしまいます。切った茎は1年以内に再生し、新しいバナナが育ちます。私たちのバナナペーパーは、ザンビアの有機バナナ畑で通常捨てられる茎の繊維に、日本の和紙工場で古紙やFSC認証パルプを加えて作っています。
商品名は「ワンプラネット・ペーパー®︎」。日本の和紙技術とアフリカの村でとれる有機バナナ繊維のコラボで生まれた、質が高く、環境と社会に価値をうみだす紙です。ワンプラネット・ペーパー®︎協議会 (全国の印刷会社、紙製品メーカーのネットワーク)で様々なバナナペーパー商品を開発しています。
Where? 場所
アフリカ南部の国ザンビアは、世界遺産のビクトリア滝で有名な国です。バナナペーパー工場は、ザンビア東部のエンフウェ地域にあります。このエリアは、アフリカ屈指の国立公園「サウスルアングア国立公園」があり、野生のキリン、ゾウ、ライオンなどが生息する自然豊かな地域です。サウスルアングワ国立公園は2017年末、国連より「世界初のサステナブル国立公園」に選ばれました。
Background ワンプラネット・ペーパー®が生まれた背景
2011年、野生のシマウマ・キリン・ゾウが自由に歩くアフリカ南部の国・ザンビアの村で、貧困層の女性たちと共にバナナペーパー事業を始めました。
素晴らしい自然と野生動物の世界が広がるザンビアのエンフウェ地域。その一方で、村の貧困問題は深刻で、貧困が原因での密猟や違法の森林伐採の問題が起きています。2007年から村の人々の教育支援、職業スキル研修などを行っていましたが、より直接的に雇用を生み出す事業ができないかと探していた時、バナナの繊維から紙ができるということを知りました。
「エンフウェ村にはバナナ畑が広がっている。しかもオーガニック。ザンビアで、持続可能なバナナペーパーづくりができるかもしれない。」そんな想いを胸に、国立公園近くのバナナ畑を訪問。畑のオーナーに「バナナから紙ができる」と伝えると、オーナーはとても驚きました。 これまでは食べるためだけだったバナナが、この事業が実現すれば、バナナ畑のオーナーから、繊維づくりに関わるOne Planet Caféの女性たち、そして村の人たちにも新しい仕事を生み出します。貧困問題の解決や野生動物の保護にもつながり、利点は山ほどあります。しかも、One Planet Caféのポリシーである「楽しさ」にもつながるエコビジネスです。
どうやって繊維を取り出すのか、1本の茎からどれくらいの量が取れるのか、など、当初知識は全くありませんでしたが、期待に胸をふくらませる村の人々と一緒に取り組もうと決めました。
日本帰国後、既にバナナペーパーから名刺を作っていた丸吉日新堂印刷株式会社の阿部社長に相談したところ、「ぜひやりましょう!」という積極的な返事。そして2011年、バナナペーパー事業を開始しました。すべてが手作りの道具、手作業でのスタートでした。
Team バナナチーム
現在、バナナ繊維とりの作業や手すきの紙づくりを行うバナナチームは22名(2017年10月現在)。最貧困層の出身で、このバナナペーパーが初めて雇用された仕事というメンバーがほとんどです。基礎教育を受けていないメンバーも多く、仕事の中での学びや研修を通じた教育がとても重要な機会となっています。
Fair Paper フェアトレード認証
2016年に、紙業界では日本初となるフェアトレード認証 (WFTO 世界フェアトレード機関)を取得しました。ワンプラネット・ペーパー©︎は、日本初のフェアトレード認証の紙です。
WFTOは、サステナビリティの全ての柱である社会、環境、ガバナンスに関する10の指針と約100の基準をクリアした団体に与えられる、第三者認証のラベルです。
適切な労働条件、正当な賃金や支払い、児童労働の禁止、オーガニックやグリーン電力など環境配慮がされていることを示します。弊社の東京事業所、現地ザンビアの工場、バナナ畑に外部審査員が訪問し、評価していただきました。
フェアトレード取り組みの一例
- 関わっている村の人々が、貧困を乗り超えるためのフェアな収入を得る
- 児童労働の禁止、子どもが仕事に就くのではなく学校へ行くための支援
- 現地での環境と健康の教育の実施
- 男女の同等の労働に対し、平等な対価を支払う
- 雇用は人種や社会階級、国籍、宗教など、あらゆる面において一切の差別をしない *1
- 生産者が社会的・経済的・環境的に健全な生活ができるよう配慮して取引し、利益のみを優先することはない
- 環境循環型のエネルギー・リサイクル・CO2削減・野生動物保護・オーガニックな取り組みを積極的に導入する*2
- 販売する商品(紙)の売り上げの一部を村に還元し、持続可能な発展のためのプロジェクトを支える*3
*1 One Planet Cafeのチームの多様性: ほぼ半分が女性、多様な宗教(仏教/キリスト/イスラム)、幅広い年齢層。
*2 One Planet Cafeはグリーン電力使用 (風力・水力) 、ゴミやCO2削減の明確な方針を設定、環境循環型取り組みを事業全体に統合する。
*3 One Planet Cafeはザンビアで、小学校を卒業したことがない大人向けの教室も提供。
“Made in Japan” から “Made WITH Japan” へ!
ワンプラネット・ペーパー®は、ザンビアのバナナ繊維と日本の和紙技術の融合によって生まれた紙です。また紙製品メーカーとのコラボレーションによって質の高いバナナペーパー商品が生まれています。
日本には、自然との調和や環境・人・文化への配慮を背景とした素晴らしいモノづくり精神があります。バナナペーパーを始め、Made WITH Japanで、サステナブル社会づくりへ多くの貢献ができると信じています。
Washi Paper 越前和紙
バナナペーパーは、福井にある越前和紙の工場で生産しています。越前和紙は、紙づくりで1500年の歴史がある地域です。大昔から受け継がれ、大切にされてきた自然と調和した紙づくりの精神が、バナナペーパーにも活かされています。
Committee ワンプラネット・ペーパー©︎協議会
2013年、ワンプラネット・ペーパー®の趣旨に賛同し、想いを共にする紙製品メーカー、印刷会社と共に ワンプラネット・ペーパー®︎協議会 を発足しました。2017年4月現在、16社の参加で、バナナペーパーを使った商品開発や営業協力、サステナビリティの意識啓発などの活動を行っています。
バナナペーパー商品には、名刺、シール、テープ、卒業証書、筒、カード、ペーパークラフト、包装紙、カレンダーなどがあります。また業務用として菊全判やロールも提供しています。ワンプラネット・ペーパー®︎商品ページはこちら>>
Factory クラウドファンディングで夢の工場建設
事業を始めた時からの目標だった「アフリカにバナナペーパー工場を!」の実現に向け、第1弾の資金集めをインターネット上のクラウドファンディング(READYFOR)で行いました。2014年3月から5月の2ヶ月間で、サポーター137人、目標金額の125%を達成。サポーターの皆さんの温かいご支援のお陰で、工場建設の第一歩を踏み出すことができました。またクラウドファンディングの他に、企業や財団からのご支援をいただきました。
2014年9月、バナナペーパー工場の建設がスタートしました。2011年に現地でバナナの繊維取りを始めた時と同じように、大きな冒険と夢に向け、いよいよ行動開始しました!
設計図も電気も水もない世界で建物つくるのは、先進国では考えられないことが数多く起こります。バナナペーパー工場は、村の大工さんたちと一緒につくりました。小学校も行ったことがない人たちが多い村から、建設マネージャー、現場監督、大工、左官などを見つけ、設計やスケジュールに基づいて建設を進めるということは、毎日がチャレンジの連続でした。
Handmade Paper 手すきの紙づくり
グリーン工場が実現し、次の目標はザンビアでもバナナ繊維とりだけでなく、手すきの紙づくりをスタートすることでした。繊維とりの仕事は、村の人々に仕事を生み出し、仕事を通じた学びなど多くの利点を生んでいます。一方で、チームメンバーの仕事やスキルアップへの意欲が、さらに次のステップアップに向け、私たちの背中を押しました。
Japan Embassy 日本大使館
2016年、在ザンビア日本大使館からの支援を受け、手すきのバナナペーパーづくりに向けた工場の拡張、研修ルームの設置、設備の導入が実現しました。
2017年春には、バナナパートナーである越前和紙工場の社長にザンビアまで来ていただき、紙すきについて直々のトレーニングを受けることができました。生まれて初めての経験に、紙すきを学ぶチームメンバーの表情も真剣です。
クラウドファンディングで第一歩を踏み出したザンビアのグリーン工場は、日本大使館、さわかみ財団、企業、1%For The Planetを通じた寄付のおかげで、現在、工場3棟、多目的ルーム、オフィスの合わせて5つの建物ができました。バナナ繊維とりと手すきの紙づくりができるようになり、これからさらに現地の人たちのスキルアップと雇用づくりを目指していきます。
Global Brand? 紙事情とこれからのバナナペーパー
世界で使用されている紙の量は、毎日100万トン以上 *1。 その中の約90%は「木」を主原料としています *2。
世界の経済発展に伴い、紙の消費量が増加する中、木の再生が追いつかず、世界では毎年日本の面積の約3分の1にあたる広さの森が失くなっています (*NASA) 。森に住む絶滅危惧種の減少、生態系破壊などさまざまな環境問題が起きています。同時に、途上国の貧困問題や先進国の失業問題が続いています。
一方、バナナは世界の約125ヶ国で栽培されています。バナナの収穫時には、次の新たな果実が育つため、古い茎を切らなければなりません。切った茎は1年以内に再生し、新しいバナナが育ちます。ワンプラネット・ペーパー®は、ザンビアのオーガニックバナナ畑で通常捨てられる茎の繊維(ファイバー)と日本の和紙工場での古紙を加えて、質の高い紙を作っています。このエキサイティングな新しい紙で、途上国の貧困解決だけではなく、日本でも伝統技術の継承や新たな市場の開拓につながる可能性があります。
これまで世界4大陸・約25カ国から、自国でもバナナペーパーづくりをやりたいが手伝ってもらえないか、との相談を受けています。どの国も貧困と環境問題を抱え、サステナブルなソリューションを模索しています。ワンプラネット・ペーパー®がその一つの解決策となれるよう、グローバルブランドを目指し取り組みたいと思います。
※出典 *1、*3 WWF2008-2010年 / *2 ワールドウォッチ研究所2004年