
ザンビアの自然が教えてくれる、これからの発展と生物多様性
2025.05.28
5月22日は、「国際生物多様性の日(International Day for Biological Diversity)」でした。
今年のテーマは、「自然との調和と持続可能な開発」。
この機会に、4月に滞在したザンビアで実際に見たことを交えて、生物多様性との関わりやこれからの開発のあり方について考えてみたいと思います。
生物多様性と私たち
「ネイチャーポジティブ」や「生物多様性」という言葉を耳にする機会が増えましたが、その意味を具体的にイメージできる人は多くないかもしれません。
しかし私たちが毎日口にする食べ物や水、そして空気もすべて、生物多様性のおかげで成り立っています。
例えば、私たちの食卓に並ぶ野菜や果物の約75%(*1)は、ミツバチなどの花粉を運ぶ虫たちによってできています。これらがいなくなれば、私たちの食生活は大きな影響を受けることになります。
しかし、その虫だけを守ればよいわけではありません。自然の最もユニークな点の一つは、生きものたちは互いに複雑に関わり合い、支え合っていることです。これを、「Symboitic relationship(相互依存関係)」といいます。
ザンビアで見てきたリアルな生態系
4月にザンビアに1ヶ月滞在し、実際に生態系を目の当たりにしました。私たちのバナナペーパーの工場の地域にあるサウスルアングワ国立公園は、世界で初めてサステナブルな国立公園に認定され、国立公園の内外で多くの野生動物が自由に生きる姿を見られます。
たとえば、ゾウは野生界の中で大きな役割を果たしている動物の一つです。彼らは、消化機能が低く、食べた植物の約60%を未消化のまま排泄します。そのフンを鳥や他の動物たちが食べ、虫などが卵を孵化させ、さらには新しい木が芽吹き、大きな自然のサイクルが生まれます。
このように、ゾウの存在に多くの動植物が依存しており、またゾウは木や植物に依存しています。
しかし、近年の気候変動や森林伐採、水不足により、ゾウを含め多くの野生動物が絶滅の危機に面しています。すでに世界では生きものの数の約73%(*2)が失われたとも言われています。
ザンビア国内では近年水不足が続いており、川の水位も低くカバやワニはもちろん、植物が実らずその他野生動物の繁殖のタイミングなどにも大きな影響を与えています。
それでも、ザンビアには長い年月をかけて自然だけの力によってつくられた豊かな生態系が今も残っています。
これからの発展のあり方を考える
滞在中は、ザンビアの手付かずの緑豊かな自然と、東京の高層ビルやアスファルトの隙間に後から作られた人工的な緑とのギャップを強く感じました。
「木は植えられても、森はつくれない」と言われるように、ザンビアに残る”生きた森”は、長い年月をかけて作られたものであり、一度失うと簡単に再生できません。
日本を含む先進国は大きな発展を遂げてきましたが、同時にその結果として73%の生物多様性を失ったという現実にも向き合う必要があります。私たちが発展のあり方を変えず、これからアフリカなどの発展途上国が同じ道をたどると、残りの30%の生物多様性まで失われる危険性があります。
だからこそ「自然との調和と持続可能な開発」という今回の国際生物多様性デーのテーマは、これからの社会にとって非常に重要です。
サステナブルなイノベーションを目指して
私たちのバナナペーパーは生物多様性を守るための一つのソリューションです。
再生可能な素材であるオーガニックのバナナの茎を使用することで、鳥や昆虫などが依存する木を切らずに紙を作ることができます。さらに、農地の土壌や水、そこで暮らす微生物などへの負荷を抑えます。
現地の森林保全団体BCP(バイオ・カーボン・パートナーズ)と連携し、2021年からクライメート・ポジティブを達成しています。BCPは、植林ではなく、今ある森林を守ることを重視し、地域コミュニティと共に活動することによって違法な森林伐採などを防いでいます。また、BCPの「緑の回廊プロジェクト」は、レッドリスト(絶滅危惧種リスト)にあるゾウやライオン、リカオンなどの生息地の保護・再生にも貢献しています。
ザンビアにいると、自然との距離が近いからこそ、私たちの暮らしがいかに自然に影響を与えているかを肌で感じることができます。しかし、私たちと自然や生きものたちの関係は、世界中どこにいても変わりません。
私たちのバナナペーパー事業を通じて、これからのモノづくりや都市開発が、環境に負荷をかけないだけでなく、よりポジティブなインパクトを生み出す”当たり前”の社会をリードしていきたいと思っています。
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自然界には欠かせないゾウ(撮影:永江早紀)

ヒョウとお花のコントラストがお気に入りの一枚。 ヒョウも絶滅の恐れがあると指摘されている(写真:永江早紀)

フェアトレードバナナペーパーの商品を持つチームメンバー。いつも明るく前向きに働く姿に元気をもらう(写真:永江早紀)
執筆:永江早紀