
マルメ市と建設業界による脱炭素協働モデル『LFM30』
2025.05.27
スウェーデン第3の都市マルメは、地域主導で脱炭素社会の目標をスウェーデン国内でいち早く実現するために、建設業界と手を組み「LFM30」という地域主導のロードマップでの取り組みを推進しています。
LFM30とは
「LFM30(Lokal Färdplan Malmö 2030: マルメ地域気候ロードマップ2030)」の略で、2030年までにマルメ市の建設・インフラ分野からのCO₂排出量を実質ゼロにするという目標を掲げています。
本取り組みには、マルメ市をはじめ、不動産開発会社、建設会社、設計事務所、建材メーカー、金融機関など、地域内外から200社を超える多様なプレイヤーが参加し、目標達成に向けた情報交換、技術協力、ネットワーキングなどを行っています。
地域主導へのこだわり
LFM30のユニークな点は、国主導ではなく、地域主導であることです。
スウェーデン政府は2015年に「Fossil Free Sweden(脱化石燃料のスウェーデン)」という国家戦略を掲げ、2045年までに脱炭素社会の実現を目指しています。
一方マルメ市は、地域の強みである官民の連携やスピード感ある意思決定力を活かし、独自の行動計画を策定し、2030年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げています。その取り組みによって、EUの「100の気候中立都市ミッション」に選ばれ、国際的にも高い評価を受けています。
加速する取り組み
LFM30は単なる目標設定ではなく、すでに多くの実践が進んでいます。例えば、環境負荷の少ない木造建築の普及や、建設現場における電動建機の導入、再生可能エネルギーの自給自足など、技術と制度の両面で着実に推進しています。
LFM30の参加企業にはCO₂排出量の年次報告が義務づけられており、排出量の「見える化」と継続的な改善が進められています。さらに、建設廃材の再利用や地域内の資源循環の仕組み化にも注力しており、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現にも大きく寄与しています。
日本への示唆
マルメのLFM30は、日本にとっても示唆に富む事例です。特に注目すべきは、自治体と地元企業が中心となってローカルの脱炭素戦略を描き、推進している点です。
日本でも地域の特性に合った脱炭素のロードマップを描き、産官学民が連携して取り組むことが成功の鍵となります。
さらに、LFM30では「早く動くことが経済的な優位につながる」という考えのもと、イノベーションやスタートアップの後押しやエコシステムの構築にも力を入れています。
日本でも脱炭素をチャンスに捉え取り組むインセンティブ設計や環境整備が求められます。
まとめ
LFM30は、単なる気候対策にとどまらず、地域の産業構造そのものを変革する挑戦です。日本の自治体や企業が持続可能な社会づくりを進めるうえで、多くのヒントがあります。まずは、自分たちの地域や業界でどんな「ローカルロードマップ」が描けるか、検討してみませんか。
なお弊社では、LFM30の取り組み現場の視察や、マルメ市の脱炭素戦略について学ぶ視察ツアーを企画提案、開催しています。お気軽にお問い合わせください。
参考URL:
LFM30 ウェブサイト(スウェーデン語)
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(写真提供:Granitor社)