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サステナビリティ・ブリッジ・イベントレポート:フェムテック企業によるオンラインセミナー | One Planet Café|ワンプラネットカフェ

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サステナビリティ・ブリッジ・イベントレポート:フェムテック企業によるオンラインセミナー

2025.04.24

スウェーデンのフェムテック企業「エスター・ケア社」オンラインセミナー開催

弊社のツアーに参加した方々を対象とした「サステナビリティ・ブリッジ・コミュニティ」のイベントとして、スウェーデンのフェムテック企業エスター・ケア(Ester Care)社のオンラインセミナーを開催しました。

近年、日本国内でも注目されているジェンダー平等(SDGs 目標5)やDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)推進ですが、スウェーデンはこの分野において、働き手のウェルビーイングと着実な経済発展を同時に実現している先進国です。

今回は、そんなスウェーデンで注目されるフェムテック企業をお招きし、先進的な取り組みを学ぶ機会となりました。

ーエスター・ケア社についてー

女性の健康に関する情報発信や支援、ヘルスケアの質の向上を目的に設立された、スウェーデン発のヘルステック企業です。女性の健康、生活の質、そして労働環境を向上を通じて、より平等な社会の実現を目指しています。具体的な事業としては、ポッドキャスト配信や、デジタルヘルスサービスなど、包括的なヘルスケアポートフォリオを展開している。

今回登壇いただいたのは、エスター・ケア社の共同設立者であるリディア・グラフルンド(Lydia Graflund)さん。

セミナーは彼女の、「これから話すことは全て科学的根拠に基づいているものです。」との言葉から始まりました。

「女性の健康」とは何か?

「女性の健康」と聞くと、漠然としたイメージを抱きがちですが、科学的に見た場合、女性には特有の身体的変化と健康課題が存在し、それらの多くはホルモンバランスや子宮の働きに深く影響しています。

以下の図は、女性が生涯に経験するホルモンバランスの変化と、それに伴う代表的な健康障害の事例です。

(図1)女性の生涯のホルモンバランスの図

女性の体は思春期に月経を迎え、妊娠・出産が可能な状態になり、その後閉経・更年期をむかえます。図では、この間にホルモンバランスは大きく変化し、身体への影響も多岐にわたることが分かります。

一方で男性の場合は、思春期をむかえると基本的に生殖能力は一定に保たれ、ホルモンバランスの変化は見られません。

(図2)男性の生涯のホルモンバランスの図

こう違いがあるにもかかわらず、スウェーデンの調査では、女性特有の症状に対する医療費や診断率は男性よりも低いことが分かっています。その背景には、ホルモンバランスによる症状への自己認識の低さや、職場でこのテーマに触れにくいタブー文化などが影響していると言われます。

社会や職場への影響

ホルモンバランスによる健康課題は、個人だけでなく社会全体にも影響を与えています。

マッキンゼー・ヘルス・インスティテュート報告書によると、女性は人生の25%以上の時間を不健康な状態で過ごしており、その半数以上はキャリアの重要な時期に集中しています。さらに、スウェーデンの統計では、スウェーデンでは実際に女性の病欠が男性に比べ平均80%多いそうです。

なぜ職場での対策が必要なのか?

職場環境の改善は、企業にとっても大きな利益をもたらします。

平等で働きやすい職場は、社員の仕事への満足度やウェルビーイング、高い生産性を生み出します。そのためには、男女間の生物学的な違いを正しく理解し、全社員が平等に活躍できる体制を整えることが重要です。また、人口の半数以上が女性であることから、女性の健康と幸福度の向上は生産性と経済性の面で大きなメリットがあるとも言えます。

解決策と国際的な動き

このような課題を解決するために、国際社会も動き出しています。

2026年には職場における女性の健康のためのISO規格が発行され、グローバルな意識改革が期待されています。ただ、実際に変化を起こすために求められるのは、職場での対策です。

エスター・ケア社では、自社のヘルスポータルサイトを通じて、e-ラーニングサービスやコラム記事などの情報発信、また女性社員向けのデジタル診断や個人に合わせた健康習慣の策定などを行なっています。小さくても気になる症状をポータル上で報告すると、オンライン上で医者がチェックをし、必要に応じて適切な治療へと繋げる仕組みになっています。

また、職場でこの話題がタブー視されていることも課題の一つです。エスター・ケア社のポータルサイトでは管理職向けの専門的な研修プログラムもあり、日々の業務の中で女性社員の健康課題を正しく理解し、適切な声かけや対応の仕方を学ぶことができます。

女性にとって働きやすい職場=企業の成長?

国際労働機関(ILO)の調査によると、女性の管理職が比率が高い企業は、会社の収益性や生産性が60%以上向上する傾向にあると言われています(ILO 2019)。

女性特有の健康課題は本人すら認識できていないことも少なくありません。だからこそ、職場において、こうしたテーマについてより話しやすくする工夫や対策をとることは、企業の経営戦略としても非常に重要です。

今回のセミナーを受けて

日本社会では、ジェンダー平等に関する議論が感情的になりやすく、「女性ばかり支援されるのは不公平だ」という声が上がることも少なくありません。しかし今回のセミナーを通して、

リディアさんは、「女性は望んでいるかどうかに関わらず、生物学的に妊娠・出産のメカニズムに沿って働いています。」と言われました。感情論ではなく、科学的根拠に基づいた理解・対策がいかに重要かということを学びました。

女性の体に生まれてきた人は、前述したような多様な症状を避けることはできません。生物学的な違いを正しく認識し、必要とされるところに適切なサポートをしていくことこそが、組織全体の生産性向上に繋がるのではと思います。